2022年2月20日、長崎知事選で当選を決めた大石氏。このときから疑惑が始まった

会見マニュアルも「新しい疑惑が出るので使えない」

 当初、大石知事は「政治とカネ」について会見で釈明する意向だったという。

「弁護士に依頼して、どうメディアなどに説明すればいいのか、『発言メモと想定問答案』を作成していた」
 と長崎県の幹部は話す。

 AERA dot.編集部もその「想定問答案」を入手した。そこには「286万円」の迂回献金疑惑について、次のように書かれている。

〈迂回寄附ではないかとのご指摘がありましたが、私の後援会としては「選対本部長の後援会からの財政的支援」との認識であり、(医療法人等からの)いわゆる迂回献金には当たらないと考えております〉

「2000万円」の二重計上疑惑についてはこうだ。

〈選挙運動費用収支報告書と(後援会の)収支報告書の作成者は違う人物で情報共有がうまくできていなかったのだと思います〉
〈後援会への貸付ではなく、選挙運動費用の自己資金とするのが正しいと思います〉

 いわば、記者会見用のマニュアルだが、大石知事は会見でこれらの疑惑について説明できていない。

 筆者が参加した記者会見でも、大石知事は、
「精査しているのでまだ何も言えません」
「まとめて、整理して発表する」
 などと言うばかりだった。

 大石知事の後援者も、こうぼやく。

「せっかく作成したマニュアルも、新しい問題、疑惑が出るので使えなくなっている。それに、何が真実なのか、大石知事自身も把握できていないようだ。その場しのぎ、綱渡り状態です」

 大石知事を告発している、神戸学院大学の上脇博之教授は、こう話す。

「長崎では告発した以上に、捜査の範囲が広がっていると聞き、根深さを感じています。大石知事の選挙運動費用収支報告書、政治資金収支報告書は明らかにおかしなものだと感じました。大石知事は修正するから違法ではないと正当化しようとしているが、二重計上している時点で厳密にはアウトでしょう。徹底的な捜査を期待します」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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