24日放送の「きょうの料理」(Eテレ・水曜午後9時ほか)は「京料理人の和食歳時記 〜祇園祭のころ〜」と題し、四季折々の風情を盛り込んだ京料理の魅力を、2人の料理人が楽しく伝える新企画がスタートする。祇園祭でにぎわう7月は、京料理人、高橋拓児さんと村田知晴さんが、京都の祭日には欠かせない自身の定番料理のアレンジを紹介。同番組に出演する髙橋拓児さんらが取り組んだ「料理を科学」する過去の記事を振り返る(「AERA dot.」2017年7月9日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。
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「料理を科学」する試みが広がっている。研究者と料理人の「研究会」から、京都の料亭では新たな料理が次々と生まれている。おいしい料理を求める強い思いが、料理も科学も進歩させているようだ。
今日は家族ですき焼き。
「お肉が硬くなるから、お肉としらたきは一緒に入れてはダメ」
そう母親からたしなめられたことがある人も少なくないだろう。しらたきに含まれるカルシウムによってアルカリ性になり、肉が硬くなると考えられていたのだ。ところが、
「本当にそう? しらたきに含まれるカルシウム成分は、焼き豆腐の半分。ちょっと試験をして確かめてみればわかるはず」
と、日本こんにゃく協会の事務局長に就任したばかりの原田都夫さんは考えた。そこで、検査機関に依頼をして、しらたき入りとなしでは、すき焼きの肉(国産和牛肩ロース、アメリカ産肩ロース)の硬さがどう変わるのか、調べてもらった。
その結果、しらたきを入れても入れなくても、肉の硬さに違いはないことがわかったのだ。
「しらたきがすき焼きの肉を硬くするというのは、誤解だったのです」
と、原田さんは話す。
●青物に塩で色が出る?
「すき焼きにしらたき」に限らず、料理の世界では経験や慣習から「こういうもの」とされているものが少なくない。
でも、本当にそうなのだろうか? 「おいしさ」の研究に30年以上にわたって取り組んでいる、龍谷大学教授で食の嗜好研究センター長の伏木亨さんも、疑問を持った一人だ。
「青物を湯がく時に塩を入れると、青い色になると料理人は言います。でも、塩は塩化ナトリウム。ナトリウムが色を保持するのはありえないと不思議に思いました」
そこで思いついたのが「にがり」。
かつては塩と言えばにがりが含まれる天然の塩だった。にがりに含まれるマグネシウムには、色を保持する効果がある。伏木さんは言う。
「青物の色を保持するのに役立つのは昔のにがりが含まれていた塩であって、今のにがりが含まれていない塩では、効果はあまり期待できないのかもしれません」
今、伏木さんたちは、料理人たちと組んで、経験や慣習から来る先入観を取り払って、「料理を科学」し、おいしい料理を作り出そうとする試みに取り組んでいる。