「人と比べて生きるのではなく、“自分の中のベスト”を目指す方がいいことに気づいたんです。そのために工夫をすること。人生は才能じゃねえな。工夫次第で人生楽しくなるんだって」

失敗しても話のネタになる「じゃあ、やっちゃえ」

 専門学校を卒業してもこれといった就職先がなく、エクレア工場で激安商品を箱詰めするバイトを始める。望んだ職場ではなく、単純作業だったが、「だからこそ、面白くして自分を盛り上げないと時間の無駄だ」と、トングの使い方から練習した。ある日、自分が詰めたエクレアが並ぶスーパーに行くと、トングの痕が付いているのを見つけた。何とかしたいと思った燃え殻は、トングにビニールテープを巻いたら痕が残らないことを発見。提案したところ工場長に激賞された。

 97年、新しいバイト先で働き始める。テレビ美術制作会社「グレートインターナショナル」(以下、グレート)である。グレートは、番組のテロップやフリップ、小物……業界で言う“消え物”を作る会社だ。燃え殻はバラエティー番組に必要な「悪魔が使うペン」や「信じられないほどデカい分度器」といった難題と日々格闘していた。納期はいつも厳しく、予算も限られるなど理不尽な要求が多い。数年後正社員になるが、ハードな仕事を続けるうちに体が悲鳴をあげ入院。テレビの仕事から離れ、採用の仕事なども担当するようになる。

“テレビ以外の新規事業を立ち上げる”と言い出したのは2007年頃のことだ。部下たちは大丈夫かと思った。燃え殻の性格が、人一倍傷つきやすく、落ち込みやすく人見知りだということを知っていたからだ。ただ、こう思ってもいた。

「同じことをやるのがイヤで新しいことを求めるあの人らしい」(部下の関口健太・46)

「見返してやりたい思いが心の奥底にありそうだった」(同・松山雅也・45)

 燃え殻に挑戦の意味を問うと、経営的に放送以外にシフトした方がいいということ。そして自分の個性を出せる仕事への欲求もあったという。

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