トランプが副大統領候補として、ジェームズ・デイヴィッド・バンスを指名した。
メインストリームのメディアでは、「バンスはかつてトランプを批判していたのに変節した」といったぐあいにトランプ悪者説にのった報道がなされている。が、このバンス指名の本当の意味は、かつて富裕層のための政党だった共和党が、下層階級の政党として完全に衣替えしたことにある。
そのことに気がついたのは、その直前に、畏友会田弘継さんから新著『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』が送られてきたからだ。
トランプは原因ではなく結果である
会田さんは共同通信の論説委員長まで務めた人だが、実は保守主義の研究家として非常に面白い仕事をしている人だ。
フランシス・フクヤマと親交を結び、江藤淳に心酔した。
しかし、ジャーナリストとしてきっちりデータにあたる。
今度の本はそれまで彼が、学術誌に書いてきた論文を集めたものだが、書き下ろしである序論は「目からうろこ」の論考だ。
なぜ、トランプはゴジラが何度でも日本だけにやってくるのと同様に、アメリカにそして世界に襲来するのか? その答えは、トランプが今の分断社会を招いたのではなく、分断社会の結果としてトランプがイコンのようにして現れているのだ、という論考なのだ。
私が文藝春秋時代にやった仕事で、誇っていいなと思っている仕事に、グループ2001名で月刊文藝春秋に1994年に発表した「規制緩和という悪夢」がある。
当時、私は、フィラデルフィア・インクワイアラー紙の二人の調査報道記者のやっていた仕事に心酔していた。ドナルド・バーレットとジェームス・スティールは、経済の大きな変化が社会の変化をもたらすというこれまでの調査報道がやらなかったような仕事を、内国歳入庁のデータなどをもとに、「AMERICA:What went wrong?」という本にまとめていた。
この本は、レーガン・ブッシュと続く共和党政権の様々な政策変更(累進課税の緩和、規制緩和の推進)で、かつてないほど経済格差が広がっているということを指摘した本だった。