「みんなも力いっぱい生きるんだよ。待っててね」
「みんな、パパだよ。しょんぼりしているね。パパもしょんぼりしている。おんなじだ。でも、聞いてくれ。パパは決して負けない。パパは絶対に負けない。大丈夫だ」
「『わたしは、ぼくはかわいそうだ』と思うことは、許しません。それはつまらないことです。くだらないことです。そんなことよりも、ほら、まわりを見てごらん。何人もの人たちがいる。~中略~ パパの子どもの君たちが、このやさしい、しょんぼりしたおとなたちのことを励ましてあげなきゃ」
「パパは必ず、元気で、ここに帰るよ。それまで、みんなも力いっぱい生きるんだよ。毎日楽しんで、楽しんで、笑って、こつこつ頑張るんだよ。OK。待っててね」
子どもたちは、手紙の内容を聞き終わると立ち上がり、「ありがとうございます。パパが帰ってこられるよう、これからも応援お願いします」と、集まった支援者たちにお礼を言ったという。
だが、当然ショックは大きいようだった。小学3年の末っ子はその晩、シャワーを浴びて出てくると、「パパに帰ってきてほしかった!」と床に顔をこすりつけて泣きじゃくった。翌日、学校の修了式から帰ってきた中学1年の次女は、「本当は、パパと一緒に家で通知表を見てたはずだったのにね」とつぶやいた。
朴被告の母は判決の翌朝、息子と面会するため東京拘置所に出向いた。「昨日は眠れなかった」と告げた朴被告は、年齢不相応にくっきりと刻まれたほうれい線の印象を差し引いても、憔悴(しょうすい)している様子だった。だが、「最後まで闘う」と、あくまでも前を向いていたという。
宣告された刑期は11年だが、すでに7年半を拘置所で過ごしている朴被告。逮捕当初から子どもたちと交わしてきた「元気で家に帰る」という約束を果たすため、次は差し戻し判決を下した最高裁で、上告審に臨む。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)