AERA 2024年7月22日号より

 町は島田氏の音声データを聞き、「信頼関係が損なわれた」と事業を中止し、完成していた救急車12台を4億1700万円で買い取り、消防署や病院に無償で譲渡した。

 町議会の委員会の場で、引地真町長は「手続きに瑕疵(かし)はない」と主張したが、町議会は7月10日、町の対応に「特定企業への便宜供与、利益誘導があった」とする報告書を採択したと報じられた。

 島田氏は自治体にどう近づくのかも発言していた。

「ワンテーブルの島田じゃないんですよ。総務省の島田先生っていう形で派遣されるのが、ちょっとミソで」

 当時、島田氏は総務省の「地域力創造アドバイザー」に登録されていた。

「君たちは、民間に見捨てられて、誰も構ってくれない田舎の自治体なんだって、そういうふうに教育していくわけです」「2年くらいリードタイムがあるんです。仕込みが。3年かけて予算化させて」「予算化の時に島田先生は、ワンテーブルの島田になります」

地方創生総合戦略77%がコンサルに委託

 企業版ふるさと納税は、自治体から寄付企業への経済的な見返りは禁じられている。ただ、入札など正当な手続きを経ていれば、問題ないというのが政府の見解だ。

 そもそも、自治体は、あらゆる事業で民間企業を使っている。まちビジネス事業家の木下斉さんは言う。

「高度経済成長期以降、行政の仕事が増えましたし、00年頃から公務員改革が行き過ぎて、職員を雇用するより、民間に投げて競争入札をした方が安上がりだと言われるようになりました」

 そんななか起きたのが、地方創生総合戦略をつくったら1千万円の予算がつくという14年の国の政策だった。地域の事情を知らない全国のコンサルが、役所に営業をかけたと木下さんは言う。

「コンサルがフォーマットを作って、あとは自治体ごとに数字を変えて、多少の作文をすれば総合戦略ができあがる、ということもありました」

 地方自治総合研究所が17年に調査したところ、77%の自治体がコンサルに委託していた。うち、53%が東京に本社があるコンサル。「結果、交付金が東京のコンサルに還流しました」(木下さん)

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年7月22日号より抜粋

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