福島県国見町に納められた高規格救急車。貸し出し事業の断念で、消防などへ無償譲渡された
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 巨額な地方創生マネーをめぐって、コンサルタントが目を光らせている。中には「ハイエナコンサルタント」とも呼べるような悪質な事例もある。AERA 2024年7月22日号より。

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 人口約8200人の町が、コンサルの餌食になった。

「ちっちゃい自治体って経営できるんですよ」「うちはいま『第2役場』。機能そのものを分捕っている」

 衝撃の発言をしたのは、自治体のコンサルティングにも手を広げる備蓄用食品製造のワンテーブル(宮城県)で当時社長だった島田昌幸氏だ。社外の関係者に語った発言が昨年、地元紙の河北新報に報じられた。

 ユーチューブで公開された録音では、島田氏は饒舌だった。

「僕たちは、ふるさと納税企業版という制度を使いながら、黒を白に変えているんですよ。侵食しまくっている」「超絶いいマネーロンダリング」

 いったい何があったのか。始まりは、2022年、匿名の3社が企業版ふるさと納税で計4億3200万円を福島県国見町に寄付したことだった。

 企業版ふるさと納税は、企業が自治体に寄付をすると、寄付額の最大9割が控除される制度だ。町は寄付金を元に、高性能な救急車12台の研究開発とリースを行う事業を計画した。

寄付企業に「還流疑惑」子会社が事業を受注

 22年11月、町は救急車の開発や製造の事業の委託先を決める公募型プロポーザルを実施。委託先として決まったのがワンテーブルだった。

 このあたりから事態はきな臭くなる。ワンテーブルは、車両の製造を救急車開発のベルリング(東京都)に発注したが、町議会によると、ワンテーブルが発注したのは事業を受託する10カ月も前だった。

 町が示した車体の寸法などの仕様書が、ベルリングの車両と酷似していたことが、ベルリングへの発注の決め手となったが、この仕様書の作成にワンテーブルが関与していた。事前に受注者を決めていた「談合」が疑われた。

 しかも、報道などによると、発端となった企業版ふるさと納税を寄付した3社は、ベルリングの親会社グループであるDMM.comとそのグループ企業だった。寄付金を原資とした事業を、寄付企業の子会社が受注するという「還流疑惑」も判明した。これが、島田氏が言う「超絶いいマネーロンダリング」の内幕だ。

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