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れおさんは、万引きを繰り返す原因が依存症という病気であることを知り、医療機関のグループミーティングを通じて依存症者や受刑者たちと交流するようになったが、その前はずっと孤独の淵にいた。
幼いころの記憶は、アルコール依存だった父が母に壮絶な暴力をふるう光景で埋め尽くされている。
5歳くらいのころ、初めて万引きをした。盗んだものは、店の駐車場に置いて帰った。
「今思えばですが、私が置かれている状況に気付いてほしいって、無言で助けを求めていたのかもしれません」
中学生になると父の暴力の矛先は自分にも向かうようになり、家には帰らず不良仲間とつるむようになった。
「今でこそ、父も自分と同じように苦しさを抱えていたから、アルコール依存になったんだろうと思えるようになりました。でも、当時は殺してやりたいほど、父を憎んでいました」
こんな人生なら、もう終わりにしたいって
周囲に悟られまいと心にふたをして強く生きてきたつもりが、そううまくはいかない。
20代半ばで摂食障害を発症し、食べて吐くために大量の食材を万引きするようになる。違法薬物にも手を出し、自傷行為を繰り返す。
「こんな人生なら、もう終わりにしたいってずっと考えていました」
何度も自殺を図ったが、意識を失うだけだったり、誰かに見つかったりして、未遂に終わった。
刑務所で出会った受刑者たちも同じような過去を抱え、自分よりはるかにつらい経験を引きずっている人もいた。そんな仲間たちや、依存症の人たちとのミーティングで、初めて心のふたを外すことができた。
「『ありのままの自分』を話しても受け入れてもらえたので、初めて安心できたんです。心が楽になりました」
そう話すれおさんだが、一方で過去を消すことができないこともわかっている。
「病気であろうと、育った環境がどうであろうと、犯罪はしちゃだめですよね。どれだけの人に迷惑をかけてきたか。なにをやっても償いきれるわけではないですし、そんな私がなにかをしたいと話すこと自体、たたかれてしまうのだろうと承知はしています」