湯浅静香さん。18歳から15年近くODを続け、今はODなど依存症に苦しむ人の相談に乗っている(写真:本人提供)

 せき止めや風邪薬など「市販薬」を乱用するオーバードーズ(OD)が、10代に広がっている。過剰摂取が恐ろしいのは、依存症に陥ることだ。なぜODから抜け出せなくなるのか。そして、必要な支援は何か──。AERA 2024年3月11日号より。

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 ODが恐ろしいのは、違法薬物と同じように依存性にむしばまれることだ。

「やめたくてもやめられませんでした」

 そう話すのは、湯浅静香さん(44)。18歳から30代半ばまで、ODをしていた。

窃盗を繰り返して実刑判決「常にラリっていた」

 子どものころ、母親から虐待やネグレクトを受けて育った。高校に入ると非行に走り、卒業後は夜の世界に。キャバクラで働いている時、客に誘われ覚醒剤など違法薬物に依存するようになった。昼夜逆転の生活になり、それを戻す目的で、医師に処方してもらった睡眠導入剤や向精神薬を飲んだ。すると仕事が楽しくでき、それが成功体験となり薬をやめられなくなった。向精神薬をミントタブレットでも食べるかのように、かじり続けた。

「自分の知らない自分がもう1人いる、そんな感じでした」

 ODをしていた時の気持ちをそう表現する。意識が混濁し、正しい判断もできなかった。酩酊状態で支離滅裂な言動を繰り返し、「常にラリっていた」(湯浅さん)。薬を飲みすぎだとわかっていても、やめられなかった。次第にスリルを求めて万引きを繰り返し、4回逮捕され、15年に懲役2年7カ月の実刑判決を受けた。

「薬で自分を傷つけるならまだしも、私のように窃盗を繰り返して刑務所まで行く人間もいます。それが、薬物依存の怖さです」(湯浅さん)

 国も市販薬対策を怠っているわけではない。厚生労働省の検討会は昨年12月、風邪薬など「乱用等の恐れがある医薬品」を薬局で販売する際、20歳未満は小容量1個に限定し、薬局側が氏名などを写真付き身分証で確認し、購入履歴を保存することも盛り込んだ見直し案を取りまとめた。20歳以上でも、複数個・大容量の購入では同様に確認する。同省は、25年までに医薬品医療機器法(薬機法)の改正を目指す。ただ、関係者は「販売制限だけでは不十分」と指摘する。複数のドラッグストアをはしごしたり、複数人で購入したりすることは防げない。ネットでは簡単に手に入る。「いくらでも『抜け道』はある」(ドラッグストアの薬剤師)。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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