男性は違法薬物の使用で服役し、その後、同じ医療機関で知り合った仲間だった。
お互いに刑務所を出た後、しばらくはLINEなどで近況を報告しあっていたが、徐々に疎遠になった。
妹からは、男性は自宅の風呂場で亡くなっていたことや、しばらくの間、誰にも気付かれず、凄惨(せいさん)な状態で発見されたことなどを聞かされた。
「詳しい死因はわからないそうですが、もしかしたら自分で命を絶ったのかもしれないと思いました。ずっと独りぼっちで、孤独だったんじゃないかって、彼の出所後の人生を想像しました」
そういえば最近、スリの常習だった治療仲間の30代男性が、出所後に周囲からの疎外感にさいなまれ続け、またスリをして刑務所に戻ってしまったことを知った。
「亡くなった男性のような末路をたどるのではないかと、胸が苦しくなりました」
とれおさんは話す。
人生の転機になったこと
罪を犯したのだから、ひとりぼっちの孤独も疎外感も当然の報い――。
そんな世間からの“風当たり”を感じるのは仕方ないのかもしれないが、一方で元受刑者や前科者は、どうにかして人生をやり直し、暮らしていかなければならない。
「やったことを許してもらえるとは思っていませんし、私たちが生きていること自体、許せないと思う方もたくさんいるでしょう。そうした状況の中で、一人だけでやり直すのは無理だと思うんです。出所後に居場所を作れず、孤独感や疎外感を抱え続けると、結局は再犯して刑務所に戻るか、自分で人生を終わらせるしかなくなるのではないかと思います」
れおさんはそう語り、続けた。
「生きるのは苦しいけれど、やり直さないといけない。そのために、同じ境遇の元受刑者同士で話せる場所があることが大事だと感じるんです。元受刑者同士だからこそ、話を聞いて気付かされることや力をもらえることがありますから」
れおさん自身、話ができる場所に救われ、それが人生の転機になった。