服役中、感じたことや学んだことなどを日記につけていたれおさん。当時の思いを忘れないように、いまでもよくノートを見返すのだという(撮影・國府田英之)
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 窃盗罪で4度服役した女性(50)が、出所から5年たった今、元受刑者同士の更生に向けたコミュニティに積極的に参加したり、服役中の受刑者と文通するボランティア活動をしたりしている。「自分なりの償いをしていきたい」。そう話す彼女は、決して消すことができない過去を持つ者同士がつながることに、どんな意義を見出しているのか。

【実物写真】「ウソをつかない」。服役中に感じたことをつづったノート。びっしりと書き込まれている

「なぜ犯罪を繰り返し、止めることができないのか、自分でも分からなかったんです」

 そう話すのは北関東に住むれおさん(50=仮名)。万引きを繰り返し、30歳を過ぎてから4度、刑務所に服役した。3度目の服役後に医師から「クレプトマニア」(病的窃盗)との診断を受け、以降、専門の医療機関にかかり治療を続けている。

 れおさんは最後の刑務所を出てから5年半、再犯せずに過ごしている。

 一方、元受刑者の立場やクレプトマニアの当事者としての情報をSNSで発信。ボランティアで服役中の受刑者と文通したり、前科者のオンライン座談会に積極的に参加したりして、元受刑者同士のつながりを作る努力をしている。

“受刑者あるある”の話

 オンライン座談会は、元受刑者らの支援活動をしているサイト「碧の森」運営者の湯浅静香さんが主催している。湯浅さんも、かつて万引きを繰り返した元受刑者である。

 れおさんがつながっているのは窃盗、違法薬物の使用、傷害、性犯罪…さまざまな前歴がある人たちだ。なぜ犯罪に走ってしまったのかをお互いに話すこともあれば、

「友達ができない」「周りに言えない」「仕事が見つからない」「恋人の親に話すか、隠すか」

 なんて悩みを相談しあうこともある。ときには「刑務所のパンがおいしかった」など、“受刑者あるある”の思い出話で盛り上がることも。話す内容はその時々の参加者で提案し合い、個人の目標を立てるなどもするが、基本的には参加者同士のつながりを持つことがテーマだ。

 そんななか、2カ月ほど前のこと。れおさんは、知人の元受刑者男性の妹からかかってきた電話に衝撃を受けた。

「兄が、死にました」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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自分で命を絶ったのかも…