部員わずか7人の大島は、春の大会でも部員を派遣協力(部員5人以上のチームが他校からの借り受けを含め10人まで登録できるルール)してくれた文京からの3人を加え、10人で試合に臨んでいたが、3回に一塁手を交代していたため、この時点でベンチに控え選手は残っていなかった。
天野一道監督も「荒田がダメなら棄権だなと思いました。ほかの選手は試合で投げていないし、ストライクが入らない」と最悪の事態も覚悟した。
だが、荒田は「自分が行く。後ろに(投手が)いないので、投げ切るつもりでした」と大黒柱の責任感から、約6分の応急治療を受けると、再び打席に立った。
マウンドでは両足をつった状態で思うように投げられず、6回に四死球で無死一、二塁、7回に2死二、三塁、8回に2死二塁と毎回のようにピンチを招くが、バックの好守にも助けられ、151球を一人で投げ抜き、終わってみれば、5対0の5安打完封勝利。ウイニングボールの右飛をガッチリ掴んだ福田悠太郎は、文京からの助っ人であり、混成チームながら抜群のチームワークで見事初戦を突破した。(文・久保田龍雄)
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。