新しく入塾した生徒に教材を渡したときのこと。「できるところまでやっておいてください」という言葉が口をついた。すると次の週、生徒はすべての問題を解いて塾にやってきた。
「できるところまでやるということは、全部やらないといけないと思ったそうです。習っていないところも自分で調べている。今までそうやって学んできたんだとハッとしました」
取材中も、田中さんのスマホには生徒から何度も着信があった。遅刻の知らせを受けたと思えば、その数十分後には欠席の連絡。支援が一筋縄ではいかないことが伝わってくる。
「でも、意外に思うかもしれませんが、うちの生徒には生真面目で几帳面な子が多いんです。中学校にうまく適応できなくても、そこにとらわれなくていい。いつだって修正できるし、長期的な展望で考えたほうがいいと伝えたいです」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年7月1日号より抜粋