ハッカズーク監修の『今さら聞けない転職・退職の超基本』では転職で「キャリア資本」を無駄にしない方法を紹介している(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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 新卒で入社した会社に定年まで勤め上げる──そんな働き方のイメージも、震災やコロナ禍を経てずいぶん変わってきた。そんななかアルムナイ(退職者)が注目されている。「三つの無限定」を受け入れる社員が重宝される日本的雇用は変わるか。ハッカズーク・代表取締役CEOの鈴木仁志さんと法政大学大学院教授・石山恒貴さんが語り合った。AERA 2024年7月15日号より。

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鈴木仁志(以下、鈴木):私はカナダの大学を卒業後、メーカーに就職しましたが、約1年で退職してスタートアップ企業に転職しました。2006年の話なんですが、いわゆる終身雇用的な考えがまだ強かったので、周囲からは「大丈夫?」と心配されました。

石山恒貴(以下、石山):当時は一社に勤め上げることが当たり前という考えは、珍しいことではありませんでした。私はバブル期の就職組ですが、会社の福利厚生の資料には「何歳で結婚して、住宅ローンはこうで、そのころには子どもが2人いて、退職金はいくらで……」という標準の人生設計が示されていました。人生の流れを会社に決められているような感じで、違和感を覚えました。

鈴木:一つの会社に勤め上げたいという同期の社員も多い中、自分は違うなと思ったんです。当時はそう考える人は今ほど多くなかったですが、あれから20年ほどたって、世の中の働き方に対する考え方はだいぶ変わってきたと思います。

石山:大きなきっかけとしては11年の東日本大震災があったと思います。プロボノと呼ばれる職業上の知識を生かして社会貢献しようとする団体などの多くはその頃から起こり始めていますし、Z世代を含む若い人たちが社会課題に関心があるのは、そういった衝撃もひとつの原因だと思います。「人生は本当に何が起こるのかわからないんだ」と。

良好な関係を築ける企業と退職者どう増やすか

鈴木:さらにコロナ禍が起き、日本の働き方が一気に変わった。企業とアルムナイ(退職者)が退職後もつながり、過去に在籍していた企業と新たな環境をホーム・アンド・アウェーのように行き来するような関係が注目され始めたのもこの頃からだと思います。石山先生は企業の枠を超えて新たな環境に移ることで学ぶ「越境学習」を唱えていらっしゃいますね。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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