バランスのよいメニューが並ぶ(筆者撮影)

 ラーメン店は従業員が集まらないという問題があるが、「葵」はしっかり従業員が育ち、会社が成長している。それはなぜか?

「まずは社員と誠実に向き合うということです。忙しさを理由にコミュニケーションをいいかげんにせず、当たり前のことを当たり前にやることです。私はカリスマ的な社長を目指すのではなく、ひたすら社員に向き合う社長になろうと思ってやってきました。『ゆうひ屋』時代、父と比べられたのが本当に嫌だったので、あくまで現場の店長が主役になれるよう、自分はできるだけ目立たずにいます」(梅原さん)

 週休2日、8時間労働、残業代全額支給など、賃金面や就労規則の面でもしっかりと制度を整えている。気持ちだけでなく制度にも誠実さは現れるのである。

経営者として、従業員育成はもちろん、店舗拡大などもしっかり戦略を練り、実行する(筆者撮影)

「葵」はドミナント戦略を取っている。川口を拠点として、その周辺エリアで店舗を拡大していくという戦略だ。セントラルキッチンからのスープや食材の配送や、アルバイトのやりくりなどを考えてもドミナント戦略は魅力だが、一番は「川口エリアと地域密着でやっていきたい」という梅原さんの思いが一番大きい。20年5月には本店があった場所を一番弟子に譲り、本店を蕨に移転した。

「埼玉はドミナント戦略のお店が多く、大宮エリアなら『狼煙』さん、上尾や川越エリアなら『よしかわ』さんというようになんとなくの縄張り感があるような気がします。うちは川口・蕨エリアですが、それぞれのエリアでそれぞれのお店が頑張っていて切磋琢磨しているのです」(梅原さん)

細めストレートの低加水の自家製麺(筆者撮影)

 父・和夫さんの作った赤羽の「ゆうひ屋」は今年で24年。和夫さんは22年に亡くなったが、母・兄・姉の3人で店を続けている。梅原さんの店づくり、味作りはここで学んだもの。まだ実家とのわだかまりは解けないようだが、その恩は忘れてはいない。(ラーメンライター・井手隊長)

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