「僕が会議で話し合いを求めるたび、事務局長が『今日は時間がないから次の会議で議題にしよう』と言う。でも毎回その繰り返しで、いつになっても議題にしない。僕は別に『P連を変えてくれ』と言ったわけでなく、『変える必要があるかどうかを含め、みんなで話し合おう』と言ってきただけ。その話し合いすら拒否するのでは、もうどうしようもありませんよね」

 男性はこれ以上P連に所属する意味はないと考え、同じ小学校の他の会員や校長とも相談のうえ、同校PTAとしてP連から退会することを決めた。

学校や教委も口出せず

 他方では、会長がP連を私物化する例もある。ある県P連では、会長に追い詰められた事務局長が離職を余儀なくされた。在籍年数は事務局長のほうが長かったため、就任当初は会長も事務局長の助言に従っていたが、年を重ねるうちに暴走を始めたという。

「たとえば、数十万円程度の支出は会長が一人でどんどん勝手に決めてしまいます。『そんな予算はない』『ちゃんと総会にかけてほしい』と訴えても、『これで処理して』の一点張り。もう手がつけられなくて……」(元事務局長)

 揚げ句、会長は資金繰りの悪化の責任を事務局長にすべて押し付けた。事務局長はうつ病を患い、離職した現在も治療を続けている。

 6月にはさいたま市PTA協議会でも元会長らが業務上横領の疑いで逮捕された。

 PTAや連合組織で権力を握った人物に対抗することは、かくも難しい。PTAは行政上“社会教育関係団体”と位置づけられているため、学校や教育委員会に助けを求めても「我々は口出しできない」と言われてしまう。さらに最近は地域住民が学校運営に参加する「コミュニティ・スクール」の推進で、元保護者の学校への関与は増している。「部外者だから」という理由では追い出しづらくなりそうだ。

 だが、泣き寝入りはよろしくない。相手が去らずとも、自分が去ることはできるだろう。不同意の表明が増えれば、いつかは状況も変わるはず──。もはやそう祈るしかない。

(ライター・大塚玲子)

AERA 2024年7月8日号

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