「PTA会長はその人から言われたことをただ伝えるだけ。私たちが『それはおかしい、理由が分からない』と訴えても、『私に言われても……』と逃げてしまう。話になりませんでした」

 会長に指示を出した女性は一体何者なのか──。

 周囲に尋ねると、女性は“顧問”と呼ばれる地域住民であることがわかった。十数年前にPTA会長をしていた元保護者で、子どもはとうに成人している。ところが今でもPTAの役員会には毎回顔を出し、あらゆることをほぼ一人で決めているという。昔からPTA活動に熱心で、皆が嫌がる面倒な仕事も進んで引き受けてきたため、発言力があるらしい。

「なにしろ経験と実績があるので、皆その人に『おんぶに抱っこ』でやってきたんです。『あの人に聞けば何でもわかる』というので、校長もPTA会長もその人の言うことに従ってきた。“顧問”を頂点にピラミッド形の構図ができあがっていました」(元委員の母親)

 だが、そもそも“顧問”はPTAの正式な役職ではない。会則に「顧問を置くことができる」という一文はあるものの、組織図に“顧問”の文字は見あたらない。つまり女性は、このPTAで何ら権限をもたないわけだ。そんな人物になぜ、PTAのことを好き勝手に決められてしまうのか? 納得できなかった。

むちゃくちゃな理屈で

 こうなったらもう自分が本部役員になってPTAを内側から変えるしかない──。そう考えた母親は意を決し、仲間たちと共に今年度の役員に立候補した。だが、これもあっさり“顧問”に退けられてしまったという。

「役員決めの場で“顧問”が私たちに対し『役員を“免除”してあげます』って言い出したんです。『あなたたちは以前も役職をやったことがある。何度もやらせるのはかわいそうだから』って。一見親切そうですが、むちゃくちゃな理屈です。目の前で突然シャッターをバンとおろされた気分でした」(同)

 異議を唱える者はなかった。後にわかったが、このときはPTA会長すら立候補者の存在を知らされていなかったという。呆然(ぼうぜん)とする母親たちを尻目に“顧問”は一人で話を進めた。

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