『食の事典シリーズ 調理科学×カレーの事典』では「いったい何がカレーをおいしくさせているのか」を徹底的にひも解いている
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 カレー専門の出張料理人として知られる水野仁輔さんが、カレーを科学する事典『食の事典シリーズ 調理科学×カレーの事典』を監修した。カレーのおいしさを構成する要素を「濃い味」「強い味」「甘い味」「深い味」「香り・風味」の5つに分類し、それぞれについてとことん探究した本だ。

 カレーと言えば夏。夏と言えばカレー。本格的な夏の到来を前に、『食の事典シリーズ 調理科学×カレーの事典』の発売を記念して、「濃い味」に関する考察の全文を公開したい。

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 味が薄いカレーよりも味が濃いカレーのほうがおいしいと思う人は多いはずです。味が薄いと「ぼやけている」とか「物足りない」という印象が強まります。逆に味が濃ければ「引き締まっている」とか「十分な味わいだ」と感じます。では、カレーの味を濃くしている要因はどこにあるのでしょうか?

 視覚的に捉えてみるとわかりやすくなります。原材料を並べ、カレーの仕上がりを想像してみてください。一度に鍋にすべてを加えて混ぜ合わせるだけではカレーになりません。順に加熱していくことが大事。加熱によって個々の材料に含まれる水分が抜け、味わいが濃縮するのです。「濃縮」という現象によって「濃い味」が生まれます。

 たとえば煮物を想像するとわかりやすいかもしれません。肉じゃがを作ったとき、味が薄いなと感じたら、そのまま加熱を続けて煮詰めます。すると、味が濃くなる。料理の総量が減ることによって、濃縮が起きたり、塩分濃度が相対的に濃くなったりするためです。

 この現象を「脱水による濃縮」と理解してください。これまでカレーのおいしさを語るときに意外と注目されなかった視点。実は非常に重要なポイントです。

 こんな想像をしたことはありますか? あなたの目の前に器に盛られたカレーがあるとします。ここには一体どれだけの肉が入っているのだろう? ここには一体どのくらいの玉ねぎが含まれているのだろう? それが「味の濃さ」に直結するのです。

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脱水すればするほど味は濃くなる