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 4月に東京・渋谷で行われた「Deathフェス」。まじめに、楽しく「死」や「死後」について考えるイベントに2千人を超える来場者が集まった。主宰者したのは起業家・市川望美さんと小野梨奈さん。開催のきっかけは、遺体を火葬せずに堆肥にして土に還す「堆肥(たいひ)葬」(有機還元葬)だった。AERA 2024年7月1日号の記事を紹介する。

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小野:お酒も少し入ってくつろいだ雰囲気だったから、ちょっと変なことを話しても許してもらえそうだなと思って、「私、堆肥葬に興味があるんですよね、あまり人に話したことなかったんですけど」と言うと、市川さんがすごく面白がってくれたんです。

市川:私自身もお墓以外の選択肢があればいいな、と思っていましたから。お互いの思いがピタッとはまった、みたいな瞬間でした。数年前に、母の叔母が亡くなり私も「エンディング周り」のことを考えるようになっていました。おしゃれな人でしたが、献体として登録していたため、病院から入院着のような服装で運ばれ、数カ月も戻ってきませんでした。その時、「もっと彼女にふさわしい姿に飾ってあげることができたのでは」と悔やんでいた母と、「エンディングドレスみたいなのを作れたらいいね」という話をしていたんです。「エンディング」を事業として考えてみるのも面白そうだし、生き方を考える上でも死について考えるのは大事なことだな、と思ったんです。

──「Deathフェス」のプレ・イベントとして昨年10月に「堆肥葬スタートアップ視察報告会」を開催されました。

小野:堆肥葬は人間の遺体を微生物によって分解して堆肥に変え、養分として新しい命へ循環させる葬送方法です。米国・シアトルで3社のスタートアップがビジネス化していますが、堆肥化するシステムは会社によって異なります。コロナ禍で中断されていたスタートアップの視察ツアーが再開されたのを知って、居てもたってもいられず一人で参加しました。1週間ほど滞在し、スタートアップの関係者から話を聞けたのでその報告会をしました。米国は宗教上の関係で土葬が主流でしたが、近年は火葬が増えているそうです。米国で堆肥葬を生前予約するのはZ世代が大半だとも聞きました。ドイツでも昨年から堆肥葬のサービスが始まっているようです。今回のDeathフェスの反響の大きさから、日本でも堆肥葬を選択できるようになれば、特定の世代に限らず高いニーズがあるという手応えを感じています。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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