ブランドの展示会ブースでは、細かいパーツを組み上げていく時計師の熟練の手仕事を間近で見ることもできる (c)2024 Watches and Wonders Geneva Foundation

 ビジネスシーンで身につけるには、どんな腕時計を選べばいいのかを考察してみたい。

選ぶべき腕時計の条件

 まずは、上品で小ぶりな腕時計を選びたい。かつて「デカ厚」の腕時計が流行したが、ビジネスには向かない。男性はケース径40ミリ前後がシャツの袖口に収まりがいい。女性の場合には36ミリ前後、あるいはもっと小さなケース径が似合うだろう。

 つぎに、パッと見て時刻を判読できる視認性を重視すると、時分秒の三針を持つ腕時計が選ぶ条件となる。秒針を廃した二針であれば、さらにエレガントさが増す。文字盤にストップウォッチのメーターがあるクロノグラフと呼ばれる腕時計は男性に人気が高いが、スポーティーな顔つきでカジュアルに見える。職種によるとは思うが、仕事でストップウォッチを活用する機会はほとんどないはずだ。

 今年の「ウォッチズ&ワンダーズ」では、こうしたリアルな視点にこたえる三針の新作腕時計がいくつも発表された。これについて、ジャーナリストの見方は二手に分かれる。「ここ数年マーケットを牽引(けんいん)した中国の経済に陰りが見えて、腕時計ブームは階段の踊り場にある。それで、各ブランドが複雑機構を搭載したハイエンドな腕時計を出し控えた」という悲観的な意見。いっぽうで、「高額なモデルばかりでは次世代に届かない。新しい消費者を育てるためには、手が届く価格の腕時計が必要だ」といった意見もある。

 私自身はファッションの影響があると見ている。昨今、「クワイエットラグジュアリー」という言葉が注目を集める。美しいシルエットや上質な素材のシンプルな洋服が、再評価されているのだ。腕時計は小さなアイテム。そこに「クワイエットラグジュアリー」な傾向が表れるのは、必然だと思う。

 気になった新作をいくつか紹介していこう。まずは、ロレックスの「パーペチュアル1908」。ブランドが誕生した年を名に冠した新しいコレクションで、三針で日付なしのクラシックな顔つきだ。アイスブルーの文字盤が特徴だが、こうした明るいブルーは、グランドセイコーやレイモンド・ウエイルの新作にも見られ、今年のトレンド色といってもいいだろう。

暮らしとモノ班 for promotion
7月16,17日開催Amazonプライムデー。八村塁選手が厳選するアイテムは?
次のページ