コロナ禍を経て、スイスでの時計展示会も完全復活。世界中から上顧客、バイヤー、プレスが集まった (c)2024 Watches and Wonders Geneva Foundation
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 舞台は、「バーゼルワールド」ではなく「ウォッチズ&ワンダーズ」。発表された今年の新作から、腕時計ビジネスの潮流が見えてくる。AERA 2024年7月1日号より。

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新作発表の舞台がスイスであるのは変わりないが、いまや舞台はバーゼルではなくジュネーブの「ウォッチズ&ワンダーズ」である (c)2024 Watches and Wonders Geneva Foundation

 4月上旬、スイスのジュネーブで開催された国際的展示会「ウォッチズ&ワンダーズ」を取材した。ファッション誌の編集者にとって、春は腕時計の季節。出張を告げると、事情を多少わかっているスタッフから「今年もバーゼル?」と問われる。

いま舞台はジュネーブ

 しかし、開催されていたスイスの都市名を冠していた「バーゼルワールド」は、いまや開催されていない。ロレックスやパテックフィリップといった名門、オメガやロンジンなどのスウォッチグループ、タグホイヤーやウブロなどを擁するLVMHグループのブランドと、一時は2千を超す出展社が集まる最大規模の展示会だったが、2018年の開催が最後となった。その年の会期終了後に、オメガをはじめ多くのブランドが撤退を表明。翌19年はスウォッチグループ不在で開催したものの、20年はコロナ対策を理由に中止となった。このタイミングで、ロレックスやパテックフィリップ、シャネルやショパール、そしてタグホイヤーやウブロやゼニスのLVMHグループも撤退。隆盛を誇った「バーゼルワールド」の崩壊は、事務局のMCHグループが突然に開催延期を発表したり、ブランドへの出展料の返還に法外な条件をつけたりしたのが理由だと推測される。

 かつてジュネーブでは、「SIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)」、通称ジュネーブサロンが、「バーゼルワールド」とほぼ同じ時季に開催されていた。フランス語で「高級時計」を意味する名前を持つ展示会だけあって、カルティエやピアジェといったハイブランドが集まるリシュモングループが中心となって、上顧客やバイヤーを招いていたのだ。

「バーゼルワールド」の開催が途絶えた20年、そして21年はコロナ禍とも重なったが、元SIHHは「ウォッチズ&ワンダーズ」と名前を変えて、オンラインでの発表会を継続した。22年からは、従来通りバイヤーやプレスがジュネーブを訪れてリアルでの開催となった。この間に、規模を一気に拡大。バーゼルの主力組であったロレックス、パテックフィリップの両名門、腕時計に力を入れるシャネル、タグホイヤーやウブロやゼニスといったLVMH系、そして、日本からはグランドセイコーも「ウォッチズ&ワンダーズ」に出展を果たし、一般客の入場も可能となった。今年は、54ブランドが新作を発表し、次世代を担う時計師学校のプレゼンテーションなども開催。いまやジュネーブが、腕時計の晴れ舞台となった。

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