表彰式後、決勝を戦ったデンソーの本川紗奈生と称え合う。高校時代の同級生の本川とは、試合が終われば親友の姿に戻る。オフに食事や旅行を共にすることも。町田はプライベートではよく喋るという(撮影/小黒冴夏)

「自慢できるようなプレーは何一つできなかったし、私がアシスト記録を樹立したのも私のパスをみんなが決めてくれるから。私はみんなに活かされているだけなんです。それに、もともと注目されるのは苦手で」

 シャイな性格なせいか、なかなかメディアの前には出ようとしない。

「女子バスケ界には高田(真希)さんや(馬瓜)エブリンなど言葉が巧みな人がいる。バスケの魅力を語るのは彼女たちに任せ、私はコートの中のプレーでバスケの魅力を伝えたい」

 そしてこうも言った。

「正直に言うなら、五輪後の注目はプレッシャーでしかなかった。バスケの入り口は私でもいいけど、いずれは他の選手を応援してほしい。女子バスケには魅力的な選手がたくさんいるんです」

 他人を活かしてこその自分という信念は、どうも揺るぎそうにない。

小柄で「通用するのか」の声 負けず嫌いではねのける

 北海道旭川市で会社員の父・茂典(61)、看護師の母・ルミ(59)の次女に生まれた。兄、姉の3人きょうだい。遊び相手は常に5歳上の兄やその友達。兄がしていた野球を幼稚園の頃から遊びの一つとして始めた。女児と小学校高学年の少年では運動能力が大人と子どもほど違う。それでも町田は懸命に食らいつき、運動神経がメキメキ磨かれた。母は、この頃に負けず嫌いも醸成されたのかも、と笑う。

「家では長男とK-1やプロレスもしていました。技を掛けられても必死に食らいつくんです。負けず嫌いな上に頑固でした」

 小学2年、早くも人生の大きな節目を迎える。学校のマラソン大会で優勝すれば野球のスパイクを買ってやると父に言われ、必死に走った。1位になった町田に声をかけた少女がいた。小中高校、そしてWリーグでも共に過ごし、現在は日立ハイテククーガーズでアシスタントコーチを務める高田汐織(31)だ。高田は町田に一緒にバスケットをやらないかと声をかけた。

「兄や私が所属していたチームが、人数が足りず解散しそうになったので、足の速い子を勧誘しろと言われ、町田に声をかけたんです」

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