16年ぶりの優勝にチームが沸く。ヘッドコーチのBTテーブスは「良いチームは指導者が優秀、素晴らしいチームは選手それぞれがリーダーシップを取っている。富士通は素晴らしいチームになった」。連覇を目指す(撮影/小黒冴夏)

 コミュニケーションが増したチームはがちっと固まり、これまで届かなかった優勝に辿(たど)り着く。

 町田はWリーグで毎年のようにアシスト1位を記録し、その実力は誰もが認める。シューターたちは町田のパスは打ちやすい、町田からパスをもらうからこそ確実に決められる、と口を揃(そろ)える。

シュートが打ちやすいようボールの縫い目も気にする

 林は代表で初めて町田とプレーした時から、やりやすかったと語る。

「瑠唯さんは自然とこちらがほしいタイミングでパスをくれたり、楽しくバスケができるようなパスをくれるんです。多分、私と瑠唯さんはコート上で考えていることが同じなんだと思います。だから一緒にプレーをするのはすごく心地いい」

 町田と林の息の合ったプレーは、今シーズンのリーグでも随所に見受けられたが、真っ先に思い出されるのが東京五輪準々決勝のベルギー戦である。日本女子バスケ初の五輪ベスト4進出を懸ける天王山といってもよかった。

 シーソーゲームとなり、83-85と2点リードされ、残すは15秒。万事休すかと思われた。ドライブで切り込んだ町田がシュートを打つ動きに入った。成功すれば同点。だが、町田は予想外の行動に出た。斜め後ろにいた林にパス。町田の意図を汲んだ林は3ポイントシュートを決め、試合終了直前に86-85と逆転勝利。このシーンは多くの人に感動を呼んだ。

 この逆転劇を生んだのは、町田が相手にパスを出す位置やボールの強弱だけでなく、ボールの縫い目まで気にする賜物(たまもの)であるとも言える。

「縫い目がそろっているほうがキャッチしやすいし、選手によっては縫い目をそろえて打つ選手もいる。なるべくブレなくシュートが打ちやすいように心がけてパスを出してます。そんな余裕がないときももちろんありますが」

 この東京五輪で、町田は世界中のメディアに絶賛された。翌年にWNBAに移籍するきっかけにもなった。しかし五輪後、町田はメディアの前にほとんど姿を現さなかった。

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