電波を発する電子機器を利用している乗客に注意し、逆ギレされるケースもあるという。画像はイメージ(GettyImages)

 男性はチーフの胸ぐらをつかんで壁に押しつけ、しまいには「怒らせたお詫びに、到着するまで隣に座って酌をしろ」と言い出したという。明らかに理不尽な迷惑行為だったが、チーフは要求を受け入れ、上位クラス22人の接客は吉岡さんが1人で担当することになった。

「1人の迷惑行為に付き合って、きちんとルールを守っている他のお客様へのサービスの質を低下させる対応は疑問だったし、今なら考えられません。でも当時は、波風を立てないことをよしとする風潮が残っていたんですね。チーフは『大丈夫よ、あの人お子様なだけだから』と言って、会社にトラブルレポートをあげようとしませんでした」

 当時の航空業界のカルチャーを如実に物語るのが、1983~84年に放送されたテレビドラマ「スチュワーデス物語」だ。吉岡さんは、堀ちえみ演じる主人公のCA訓練生がクレーム対応として土下座し、周囲から「今世紀最大のガッツだよー!」と褒めたたえられる場面を鮮烈に覚えているという。

 だが時代の移り変わりとともに、暴言や暴行、土下座の強要といったカスハラには毅然と対応する流れになっていった。CAの腕をつかむ、勝手に非常用機材を触る、といった問題行動をとる乗客には、初めは「ご遠慮願えますか?」、次は「やめて下さい」「機長に報告します」などと徐々に注意のトーンを強め、手に余る場合は警察に出動してもらう。

セクハラされたらどうする?

 セクハラへの対応も同様だ。「大人しそうな子が狙われる」と話す吉岡さん自身は、悪質な被害の経験は少ないというが、ある日の勤務後、後輩から「お客様にエプロンのひもをほどかれてしまって……」と打ち明けられたという。

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盗撮されて「お尻がムチムチ」