「どうしよう、血が止まらない!」
都内在住の30代男性が、スライサーの刃で人さし指の腹を深くえぐってしまったのは、2023年12月27日夜、調理中のことだった。傷口をティッシュで押さえ、心臓より高い位置に手を上げてみたが、血は一向に止まらない。
手遅れはいや。救急車を呼ぶべき?
ネットで「指 怪我 血が止まらない」と検索。すると、こんな文言が並んだ。
「出血が多量の場合は、119番通報を」「放置すると後遺症」「縫合処置は6時間以内」
もし手遅れになってしまったら? 後遺症が残るのも困る。救急車を呼ぶべきか――。
たまたま看護師の友人からLINEがあり、状況を伝えたところ、「必ず出血は止まるからまずは落ち着いて。傷口の写真を送って」と言われ、「119番」ダイヤルを踏みとどまった。その後、指示通り、流水でよく洗い、傷口をティッシュで15分ほど押さえ続けたら、出血が止まった。
「取り返しのつかないことになったらと思うと怖くて、もう少しで救急車を呼ぶところでした」(男性)
「搬送の必要性が低い」が12%
昨今、救急車の“過剰利用”が社会問題になっている。
救急車の出動件数と搬送人員数は、コロナ禍などの一時期を除きほぼ右肩上がりだ。2022年の出動件数は、前年比16.7%増の722万9572件、搬送人員は同13.2%増の621万7283人で、過去最多を記録した。1日平均1万9807件、約4.4秒に1回の割合で救急車が出動し、国民の20人に1人が搬送された計算になる。
ただし、搬送された患者の半数近くは外来診療で済む軽症だった。うち、「接触時、見た目に緊急性がなかった」「脳卒中や急性冠症候群の疑いがなかった」「医師引き継ぎまでにバイタルサイン・心電図の異常がなかった」「救急隊が応急処置を行わなかった」の4項目全てに該当した人、つまり「救急搬送の必要性が低かった」人は12.2%を占めた(いずれも総務省消防庁「令和5年版 救急・救助の現況」から)。
消防庁発行の手引「救急車を上手に使いましょう」では、実際に救急車が要請された、こんな事例が並ぶ。