「ことばキャンプ」の力を体感した私は、このプログラムを提供するNPO法人の講師になり、いまは代表を務めています

 学校に行くことのメリット、デメリットを一緒に考えたり、どうせ家にいるのなら、いろいろな大人に会いに行って、その人の話を聞いてみようと思い、さまざまな仕事をしている人に会いに行ったり。視点を変え、発想も切り替えたら、「不登校も悪くない」とさえ思えるようになったのです。私は外国人の訪日ガイドもしていたので息子も一緒に連れていき、引きこもって外に出ないときは家に人を呼んで打ち合わせをしたり、とにかく発想を転換してやってみると、次々にアイデアが浮かんできました。私の気持ちが楽になり、不登校に対する引け目や罪悪感がなくなっていきました。

 好きだった料理にもまた力を入れるようになって没頭したり、掃除をすると気分がスッキリするので断捨離をしてみたり。「不登校児の親」という概念をきれいさっぱり取り去って心機一転前を向いて進むようになりました。何かが吹っ切れたかのように変わっていく私を見て、子どもたちも気持ちがほぐれていき、主人も長男に対してどう接したらいいかわからないという状態から少しずつ自分も変わらないといけないのかもしれないと思ってくれるようになりました。

 家族という集合体で生活している以上、そのメンバーの誰かの影響を他の家族が受けることはよくあることだと思います。長男の不登校という現象を私自身が重く受け止めていた時には、なんだかそれが家族に波及してどんよりとなっていました。でも、崖っぷちまで行き、本当に子育てに必要なものはなんだろうということを世間体や自分の願望抜きに考えたとき、子どもは自分の持ち物でも、自分の評価を高めてくれる判断材料でもないということに気がついたし、自分で背負っていたプライドのような大きな肩の荷物を下ろせたような気がしました。

 私の場合はことばキャンプに出会ったことが大きなきっかけになりましたが、この「視点を変えてみる」ということに早めに気がつくと、不登校はダメだ、不幸だという思いにも陥らなくて済むのではないかと思います。もし、あなたのお子さんが不登校の状態にあるなら、自分の子育てを少し振り返ってみて、子育ての棚卸しをしてみることをお勧めします。「良い」「悪い」の判断をするのではなく、変えていく必要があると思ったことを変えていけばいいのです。

「子どもの話を途中で遮って、全然最後まで聞いてなかったなぁ」「いつもダメ出しばかりしていたなぁ」「習い事させすぎたかなぁ」などなど、振り返るのはとても大事なことです。そして、まずは改善してみること。そういう機会を得られたのは不登校になったからこそだな、と思うと、不登校も悪くないと思えるのではないでしょうか?
完璧な子育てなんてどこにも存在しませんし、いつからでもやり直しが効きます。明日は必ず来る!だから前に進んでいきましょう。

 次回7月2日配信。不登校が実は選択肢を広げるということについて、お話しします。

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村上 好

村上 好

むらかみ・よし/オカンの駆け込み寺代表、JAMネットワーク代表、「ことばキャンプ」認定講師、「まなびのば」代表、ひきこもり不登校支援人材協会認定相談指導員、聖学院中学校高等学校教育相談支援員、中医学養生士、食養生コーディネーター。大手私鉄会社で旅行業、ホテルの営業などを経験後、国際会議運営会社でAPECなど国際会議運営に携わり世界中の人々とかかわるうちに日本の教育のあり方に疑問を持つようになり、自身の子どもが通う学校でPTA改革に着手。2015年に教育団体「まなびのば」を立ち上げる。その後、長男が不登校になった際に出合った「ことばキャンプ」に感銘を受け、このプログラムを提供するNPO法人JAMネットワークの講師を経て2024年代表に就任。2019年からは、中高一貫校で教育相談支援員として不登校のサポートに従事。また不登校を「ことば」「食事」「住環境」の観点からサポートするオカンの駆け込み寺を開設し、不登校解決の支援や講演活動をしている。

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