大阪教育大学付属池田小学校の眞田巧校長。教員はこのようにIDカードともに緊急事態を伝える笛を携帯している

ID着用を徹底する

「不審者に気をつけよう」とはよく聞く言葉だ。だが、実際の不審者は「ごく普通の人」に見えることも多く、外見だけで「不審者」と判断することは困難だ。そのため、池田小では教員や保護者、業者にIDカードの着用を徹底させている。

「実際に起こりうる事態を想定し、今回もIDカードをつけていない人に声がけをする訓練をしました」

 池田小の入り口は警備員が配置された正門の1カ所で、そこでIDカードの着用を求められる。さらに玄関の事務職員がIDカードを確認し、声がけをしたうえで玄関ドアのロックを解除する。

「保護者が出先から来校するなどしてIDカードを忘れたときは、来校者用のIDカードを正門で受け取りますが、その際には、顔見知りの保護者であっても事務職員が名前と児童のクラスを確認します」

 もし仮に、校内にIDカードを着用していない人がいれば、教員は声をかけ、注意する。それに従わない場合は、躊躇なく非常ボタンや防犯ブザーを鳴らす。

保護者が学校を訪れる際にIDカードをつけることは不審者侵入対策の基本である=東京都内、米倉昭仁撮影

うっかり忘れは「恥」

 そこで欠かせないのが保護者の協力だ。一人でも「IDカードをつけるのが面倒だ」という保護者がいれば、安全管理体制は崩壊してしまう。

「池田小では保護者を含めた学校関係者全員で子どもたちの安全を守っていくという意識が浸透しています。来校の際、うっかりIDカードを忘れると、『恥』と感じる文化が根づいています」

 しかし、不審者が何らかの方法でIDカードを入手したり、偽造したりする可能性もある。綿密に計画して学校に侵入した事件もある。

「来校者用のIDカードをつけている人には、念のために教員が声をかけるように徹底しています。たとえ保護者であっても、不審な動きをしたり、教員の指示に従わなかったりする場合は『不審者』として対処します」

 保護者だとわかっていても声がけをする学校の意図について、保護者からも理解が得られているという。

演劇のような訓練は危険

 大阪教育大学・学校安全推進センターの藤田大輔センター長によると、学校への侵入者による事件を防ぐためには、教員だけでなく、児童生徒や保護者、地域住民の視点や協力が欠かせないという。

 マスクやサングラスをして大声を出し、刃物を振り回しながら校内に侵入してくる――そんなわかりやすい不審者は実際にはいない。教員が不審者にさすまたを向ければ、死にもの狂いで抵抗して切りつけてくるかもしれない。しかし、予定調和のシナリオに沿った演劇のような訓練が少なくない。

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