ある高校の教員らは、不審者対応訓練後、「こんな訓練で十分ですか。先生たちは本当にこれでいいと思っていますか」と、生徒会の役員たちから不安を訴えられたという。
池田小の「学校安全の手引き」には、こう書かれている。
「訓練しているから大丈夫、という考えは本当に危険です。かえって油断してしまうような訓練はするべきではありません」
さすまたなら4、5本必要
池田小襲撃事件の後、全国の学校に置かれるようになったさすまたも「油断を生む原因になりかねない」と、藤田さんは指摘する。
「さすまたは、不審者1人に対して4、5本ないと役に立たない。本数があるから、教員たちはみなで不審者に立ち向かおうとなる。でも、1、2本しかなかったら、誰が対応するのかと躊躇してしまうでしょう」
校内に死角がないか、いつも同じ教員が点検しているのでは危険性を見落とすこともある。学校は児童生徒や保護者、地域住民に意見を求め、批判も受けとめる姿勢を持つことが重要だという。
PTAの協力が欠かせない
2022年に閣議決定された国の「第3次学校安全の推進に関する計画」は、学校安全の主要指標に、児童生徒が安全点検に参加する活動を行っていることや、PTAの参画状況を挙げている。
また、学校安全の中核を担う教員の明確化も求めている。
「池田小のように『学校安全主任』を置くことです。1人の教員にその仕事を押しつけるのではなく、PTAや地域の方に参加してもらい、役割を分担して、問題意識や情報を共有していくことが重要です」(藤田さん)
児童生徒は、教員や保護者、地域の人々から「大切にされている」と実感する必要があるという。
「子どもたちの自尊感情や自己肯定感が増し、危険に対する感知力も高まります」(同)
門扉は閉まっているのが当たり前
「見知らぬ大人から声をかけられたら、不審者と思え」という安全教育は、大人を信じられない子どもを増やすと藤田さんは指摘する。
「10年後、20年後も、地域の子どもたちの安全は自分たちが守るんだ、という住民意識を育てていくべきです」(同)
教員だけでは学校の安全を守ることができない。「もしかしたらうちの学校でも」と、常にわがこととしてとらえることが大切だという。
「校門の門扉は閉まっていることが当たり前。それをPTAや地域の人にも理解してもらい、協力してもらうことが大切です」(同)
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)