AERA 2024年6月10日号より

「便利だから」の見直し

 ZOZOが運営する「ZOZOTOWN」は今年4月、注文翌日から4日以内に発送する「通常配送」よりも余裕のある配送日(商品注文日の5日後から10日後までに発送)を選択した場合、ポイントを受け取れる「ゆっくり配送」を試験導入した。担当者は「試験導入の結果が確認でき次第、本格導入に向けて検討したい」と意気込む。

 2024年問題への対応は急務だ。とはいえ、単にトラックドライバーなどの「時間外労働の上限規制」の問題と捉え、それによって自分たちの生活にも影響が出るかもしれない、という受け止め方でいいのだろうか。これにSDGsの観点から異議を唱えるのが、環境・エネルギー問題に詳しい早稲田大学の納富信教授だ。

「大事なのは、私たちがどのような将来社会を望み、そのためには何が必要か、ということをしっかり見極めることです」

 働く人の健康や人権を守ることも、持続可能な便利さや豊かさを追求することも、地球環境への負荷を軽減することも、すべてよそ事ではなく、これからの「自分」とつながっている。納富教授は企業や組織、個人それぞれが背伸びしすぎることなく、自身の持つ課題と社会課題との“つながり”を意識し、環境や社会へのインパクト(影響や負荷)を理解した上で行動を選択することが求められている、と指摘する。つまり、SDGsの目標達成に不可欠なのは、それぞれの主体性にほかならない、というわけだ。納富教授はこう強調した。

「便利だから、何かあった時のために必要だからと、多くの資源やエネルギーを消費してしまいがちな意思決定や行動スタイルは、見直すべきタイミングに来ているのではないでしょうか」

 企業と消費者の双方が「サスティナブル・ファースト」の共通認識のもと、“真に必要なもの”を見極める能動的なライフスタイルへのパラダイムシフトが求められている。(編集部・渡辺豪)

AERA 2024年6月10日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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