時透無一郎。「刀鍛冶の里編」ポスターより (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

無一郎が「取り戻した」笑顔

 今は亡き、無一郎の双子の兄・有一郎は、弟の「才覚」の可能性について、このように語ったことがあった。

「無一郎の…無は…… “無限”の“無”なんだ お前は 自分ではない誰かのために  無限の力を出せる 選ばれた人間なんだ」(時透有一郎/14巻・第118話)

 つまり、兄を亡くしてから、たったひとりで孤独に戦っていた「これまでの無一郎」は、「真の無一郎」ではなかったのだ。鬼を滅殺するための合理性や優位性ではなく、誰かのために「鬼滅の刃」を振るうことが、無一郎の本当の強さを解放する。

 刀鍛冶の里の戦いで、無一郎は次第に「本当の自分」を取り戻していく。そのためには、命を賭して自分を救ってくれた人たちとの「記憶」や「思い出」が必要だった。剣技を知らぬ兄が身をていして、無一郎をかばってくれたこと。死にゆく間際まで自分を気にかけてくれていた刀鍛冶の鉄井戸。そして、戦うこともできない幼い小鉄が、上弦の鬼に捕縛されていた自分に「呼吸」を分けてくれた、あの経験――。

 時透兄弟を襲った、鬼の襲撃以降、心が封印されていた無一郎は、涙を取り戻し、笑顔になれるようになる。

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計算も合理性もかなぐり捨てる