「無一郎の日輪刀」の作り方を遺したのは、先代の刀鍛冶・鉄井戸で、それを鉄穴森が継承している。無一郎は彼らの思いを受けとめ、鉄穴森が打ったこの刀こそが「自分のための日輪刀」なのだと実感するようになる。
「ああ しっくりくる」(時透無一郎/14巻・第119話)
柱稽古4話目のアニオリの最大の見どころは、「刀鍛冶の鉄穴森が、無一郎の邸宅に常駐する」シーンが描かれた点だろう。ひとりで孤独に鍛錬してきた無一郎は、これまでは「他者の助力」を認識できていなかった。しかし、アニメ版「柱稽古編」では、無一郎がみずから鉄穴森に手助けを求めるシーンが挿入された。これは大きな変化である。
無一郎が「欲したもの」
刀鍛冶の里には、のちに炭治郎の刀になる、戦闘用カラクリ人形「縁壱零式」の中に隠されていた「良質な日輪刀」があった。この「縁壱零式」の刀が、極めて価値の高いものであることは、小鉄、鋼鐵塚、鉄穴森の様子から明らかであったにもかかわらず、無一郎はそれに執着する様子は一切見せなかった。小鉄の祖先が守り、炭治郎の刀鍛冶である鋼鐵塚が研いだ日輪刀は、上弦の肆・半天狗との戦闘中に、無一郎の手によって、炭治郎へ渡った。
この後、ストーリーが進んで物語の後半になると、「縁壱零式」の刀の継承者として、無一郎が含まれていたであろうことを思わせるシーンがあるのだが、無一郎はその後もこの刀を求めることはなかった。無一郎にとって「唯一無二の日輪刀」は、鉄井戸が託し、鉄穴森が造り上げた日輪刀だけなのだ。無一郎はここから後、鉄井戸・鉄穴森の日輪刀をその手に握り続け、“生涯”それを手放すことはない。