現在もペンを手に文章を書き続けている石田九段。喜寿の祝いで弟子全員の名が刻まれたボールペンが贈られた(写真:松本博文)
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年5月27日号より。

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 4月21日。千葉県柏市のホテルで石田和雄九段(77歳)の一門会が開催された。石田九段の喜寿のお祝いでもあり、多くのファンや関係者が出席し、大変な盛況だった。

 現在では「株主優待生活」で知られる投資家の桐谷広人七段は、将棋界では石田九段の後輩にあたる。両者は若い頃からの親しい間柄で、桐谷七段は石田九段に何度も練習将棋を教わり、また千回ぐらい食事やお酒をごちそうになったという。

「私の人生で、一番たくさん私にごちそうしてくれたのが石田先生なんです」(桐谷)

 石田九段はA級4期を誇る名棋士であり、また多くの弟子を育てた名伯楽だ。門下からは勝又清和七段、佐々木勇気八段、門倉啓太五段、高見泰地七段、渡辺大夢六段、加藤結李愛女流初段、鎌田美礼女流2級と、多くの棋士、女流棋士が輩出した。

「みんな師匠のことを思ってくれてるんでね。これ以上の幸せはないと、心の底から思います」

 感無量という面持ちで、石田九段は感謝の言葉を述べた。佐々木八段は師匠と同じA級に上がり、昨年度NHK杯決勝では藤井聡太八冠を破って優勝を飾った。師匠が果たせなかったタイトル獲得の夢は、2018年、高見七段の叡王位獲得によって達成された。

 石田九段は引退した現在もなお自身が経営する「柏将棋センター」で後進の指導にあたっている。プロになった弟子だけでなく、教室に通う少年少女たちの活躍を見届けるため、まだまだこの先も長生きしなければならない。

「私、死ぬに死ねないという状況でございます」

 石田九段がそう語ってあいさつを締めると、会場からは大きな笑いと拍手が起こった。次の一門会は4年後。石田九段が将棋盤のます目の数と同じ盤寿(81歳)を迎えた際に開催される予定だ。(ライター・松本博文)

AERA 2024年5月27日号

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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