鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
この記事の写真をすべて見る

 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください。(この記事は、「AERA dot.」で2024年5月14日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)

*  *  *

 小学校にある「学校生活の約束」に疑問をもつ42歳女性教員。多すぎる決まり事に異議を唱えるが、ほかの教員は「ルールを守る子供は強くなる」という。確かに、女性も約束を守るよう指導しているクラスの児童のほうがメンタルが強いと感じている。しかし、一方で、それでいいのだろうか、と割り切れない思いを抱えている。そんな女性に、鴻上尚史が贈った「子供たちを納得させられる約束であるべき」の真意とは。

【相談219】小学校での細かい「決まり事」に疑問がありますが、学校は変えようという発想がなく、モヤモヤしています(42歳 女性 教員は楽しいよ)

 小学校教員です。鴻上さんのブラック校則についての著書を拝読しました。そこで中学・高校の校則について学びましたが、実は小学校にも「学校生活の約束」といったものが存在します。配布したり、貼り出したりはしませんが、教員の共通認識でやっていこう、という約束があります。

 私はそれに疑問を感じました。例えば、「水筒は肩掛けのみ」「ランドセルの横のフックは使用不可」「筆箱は箱型のみ」「鉛筆は5 本、赤鉛筆のみ(ペン不可)、消しゴムは白色のみ」など、あげればきりがありません。多くは1年生入学時に配布される「入学のしおり」に記載されています。それを6 年生まで統一して指導します。

 もう限界にきていると思いますが、先日、同じ学年の若手教員と「水筒肩掛け」問題で議論をしました。その教員は、何かあったら自己責任では済まされず学校の責任になるので、順守させるべきだと主張しました。他の教員も追随して、「管理していた方が子どもの力が強くなる」と。

 確かに宿題や課題を終わるまで遊ばせず全部やり切らせる指導をしている学級の児童は、進級して違う担任になってもメンタルが強いように感じます。

 モヤモヤしています。

 小学校ではまだ自分で判断できない場面が多く、保護者もよくわからない事があります。そのために細かい約束があるのだとは思いますが、そもそもルールや約束に疑問すら持たない(ルールに従うことが当たり前の)年齢の子どもたちですから、変えようという発想はありません。

 小学校における「約束」をどう捉えたらよいのでしょうか? ぜひご意見をお聞かせください。

著者プロフィールを見る
鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

鴻上尚史の記事一覧はこちら
次のページ