そして注目の国が、ウズベキスタンだ。旧ソ連からの独立国で、中央アジアでは最多の人口を誇る。文化的にはヨーロッパ式であり、そこで生まれ育った選手たちも実に力強く、洗練されたプレーを見せる。これまでアジア杯では2011年の4位が最高位でW杯出場経験はないが、育成年代では躍進を続けており、2018年のU-23アジア杯、2023年のU-20アジア杯で優勝を飾り、パリ五輪予選を兼ねた今年のU-23アジア杯では決勝で日本に惜敗したが、力を見せつけての準優勝で悲願の五輪初出場を決めた。その大会で10番を背負ったMFジャスルベク・ジャロリディノフ、大型FWのフサイン・ノルチャエフの他、CSKAモスクワで主力を張るMFアボスベク・ファイズラエフなど、若手に好タレントが揃っており、最低でも今後10年は間違いなくアジアトップレベルの実力を維持することは間違いない。そして最初の世界進出の場として、2026年W杯への出場が大いに期待される。
アジアの出場枠「8.5」を考えると、順当ならば日本、韓国、カタール、イラン、イラク、サウジアラビアにウズベキスタンを加えて7枠。さらに、すでにアジア2次予選4連勝で最終予選進出を決めているオーストラリアとUAEも加えると、あっという間に9枠となる。その中で、現在アジア2次予選のグループCで2位の中国、同じくグループCで3位のタイ、グループFで2位のインドネシア、さらに今年のアジア杯で韓国などを破って決勝進出(準優勝)を果たしたヨルダン、最終予選進出がほぼ確実なバーレーン、2次予選グループDで首位争いを展開中のキルギス、オマーンなどが波乱を起こせるか。その資格を得るために、まずは上位2カ国が最終予選に進出する2次予選、特に6月6日に予定されているグループCの中国対タイの直接対決は注目の一戦と言える。
果たしてアジアからW杯初出場国は誕生するのか。ここまで挙げた国の中でW杯出場経験がないのは、ウズベキスタン、タイ、ベトナム、ヨルダン、バーレーン、キルギス、オマーンだ(インドネシアは「オランダ領東インド」として1938年フランス大会に出場)。「2050年までにW杯優勝」「2030年までにW杯ベスト4入り」を目標に掲げる日本代表チームの強化において、アジア全体のレベルアップは歓迎すべきこと。そのためにはアジアのサッカー新興国の躍進、その証としてのW杯初出場国誕生に期待したい。(文・三和直樹)