ダブリンにあるメタの欧州本部=2021年11月

「法改正によって、窓口が見つからないという問題が改善されたり、削除の基準がより分かりやすくなったりする可能性があり、今よりは状況がよくなるとは思います」(清水弁護士)

 いざ、中傷を投稿された場合、削除を要請する窓口や手続きが簡単に見つけられる方がよいのは当然だ。

 投稿者にとっても、削除のルールが明瞭になった方がプラスかもしれない。違法な投稿をした側も、誹謗中傷の意識はなく、自分なりの正義感が動機のケースが多々あるからだ。

 ただ、清水弁護士は、

「言い方を変えれば、現状を一歩前に勧める程度の法改正にすぎず、実際にどれだけ誹謗中傷を減らせるのかについては事業者次第とも言えます。個人による削除要請が受け入れられるケースは非常に少ない現状を考えると、あまり変わらない可能性もあると思います」

 と実効性への疑問も口にする。

前澤氏「日本なめんなよ」

 改正法でも、削除するかどうかは、プラットフォーム側の自主的判断に委ねられる。さらには、プラットフォーム側にどれほどの削除要請がくるのか。要請が殺到した場合、対処し切れるのかという不確定要素がある。

 また、改正法で定められた「専門性の高い人材を配置して対応する」点についても、不安が残るという。SNS上で著名人になりすました広告が問題になっているが、今回の法改正は、肖像権を侵害する可能性のある広告にも対応している。

 フェイスブックなどのSNSでなりすまし詐欺広告に使われた実業家の前澤勇作さんは、先月、運営するメタ社が公表した、

「詐欺広告かどうかを審査するチームには、日本語や日本の文化的な背景に詳しい人員を配置している」

 といった声明に対しSNSに、

「『審査チームには日本語や日本の文化的背景を理解する人を備えている』なら、俺や堀江(貴文)さんや著名人が利用された詐欺広告なんてすぐに判別できるでしょ? なめてんの?」

「日本なめんなよマジで」

 などとつづり、怒りをあらわにした。

 前澤氏は15日、なりすましの広告掲載を許可しているとして、メタと日本法人のフェイスブックジャパンを相手取り、損害賠償と広告の差し止めを求めて提訴した。

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