虚偽の記事で社会的評価を低下させられたことが裁判で認められた原告の俳優・山本裕典さん。再びヤフーの責任も問うため控訴する方針だ(写真/ワイツー提供)
虚偽の記事で社会的評価を低下させられたことが裁判で認められた原告の俳優・山本裕典さん。再びヤフーの責任も問うため控訴する方針だ(写真/ワイツー提供)

 俳優が起こしたインターネット上のニュース記事についての裁判で、判決が出た。名誉毀損に当たる虚偽の記事の「配信責任」はどうなるのか。浮かんだ課題とは。

【ひと目でわかる! 山本裕典さん名誉毀損裁判「判決」までの流れ】

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 自前で取材・執筆した記事を掲載するのではなく、新聞社や通信社、出版社などの記事を集めて広告料などを稼ぐインターネット上のニュース・プラットフォーム。このビジネスモデルは世界で隆盛を極めている。国内で群を抜く閲覧数を誇るのが「Yahoo!ニュース」だ。その影響力の大きさゆえに、単なる「器」としての役割を超えた社会的責任が、問われつつある。

 新聞社から名誉毀損にあたる記事の配信を受けてヤフーニュースに載せた「ヤフー」の責任の有無が争われた訴訟の判決が3月29日、東京地裁であった。

 原告は俳優の山本裕典さん。コロナ禍の2020年7月、山本さんの主演舞台で新型コロナ感染者のクラスターが発生したことをめぐり、東京スポーツ新聞社(東スポ)が自社サイトで「(山本さんが過去に)良からぬ噂も多い男性と組んでパーティーを開いた」などと報じた。

 記事は同日、ヤフーニュースにも転載された。記事のコメント欄(ヤフコメ)には「これを機に山本の人脈を徹底調査すべき。必ずどこかで反社と結びつく」といった誹謗中傷が投稿された。

ヤフーの賠償責任否定

 クラスターの発生原因が山本さんにあるとの印象を読者に与える虚偽の記事で社会的評価を低下させられたなどとして、山本さんが東スポとヤフーを相手取り慰謝料など220万円を求めて提訴したのは20年9月。東スポだけでなく、記事の配信先であるヤフーニュースを運営するヤフーも被告に加えた理由について、原告代理人の山本健太弁護士は、こう説明する。

「著名人に対するものも含めネット上の誹謗中傷に関する法的問題にかかわる中で、ヤフーによる記事配信で被害が拡大している印象を受けていました。そのことも念頭に山本さんと相談の上、同じような被害者を増やさないためにもヤフーの法的責任を明確化することが重要だと考えました」

 山本弁護士が所属する「レイ法律事務所」は、ネット上の誹謗中傷で自死に追いやられたプロレスラー木村花さんの母響子さんの活動支援にも取り組んでいる。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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