インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷や違法な投稿に対し、SNS事業者に対策の強化を義務付けた改正プロバイダー責任制限法が成立した。公布から1年以内に施行されるが、ネット上で横行する誹謗中傷を抑止し、迅速な被害回復につながるのか、著名人なりすました詐欺広告への効果は……。こうした問題に詳しい清水陽平弁護士は、今回の法改正について、事業者側の対策を「一歩前に進めさせる内容です」と解説する。
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今回の法改正で、法律名の通称が「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)になる。
対象は月間のアクティブユーザーが多いプラットフォーム事業者で、Googleや、フェイスブックを運営するメタ社、X(旧ツイッター)社などの大手が想定されている。近く総務省令で基準を定める方針だ。
罰金は最高で1億円
改正法では、事業者に対し、投稿の削除の申し出があった場合の迅速な対応や、削除する基準の策定・公表を義務付けた。
削除を申し出る窓口や手続きを整備し、公表する▽専門性の高い人材を配置し、対応する▽削除の申し出から一定の期間内に、どう判断したかの結果を明らかにし、依頼者に通知する――などを求めている。
違反した場合、総務省は是正勧告や命令を出すことができる。事業者が応じない場合は1億円以下の罰金を科すことができる。
改正法は、自殺者までも生んできたネット上の誹謗中傷の問題を大きく変える契機となるのか。
清水弁護士は、
「今回の法改正は、分かりやすく言えば、現在もプラットフォーム側が行っている対策について、『足りないからもっとやりなさい』と一歩前に進めさせる内容になっています」
と話す。
すでに大手のプラットフォーム側は削除を要請する窓口を設けたり、投稿の内容についてある程度のルールを示したりはしている。ただ、その窓口がどこにあるのかが探しづらく、一から探す必要があった。