節税対策のためにあまり意味のない経費を使っていくと、手元のお金は確実に減っていきます。

 節税だけに躍起になるのはNG

 もっとも、一旦手にしたお金が税金で目減りしてしまうのは確かに寂しい気持ちにはなります。ですから他でお金を使って税金を減らしたい、という気持ちになるのもわかります。しかし、ビジネスをするうえでは物事の本質を押さえ、短期的でなく、長い目で見なければならないのです。

 もし将来的に融資を受けたい場面が来ても、決算や確定申告の数字が思わしくないと、どこの金融機関もお金を貸したがらなくなります。赤字経営の人にお金を貸したがらないのは当然です。目先の節税よりも、毎年しっかりと利益を確保していくことのほうが、事業を成長させるためには欠かせないことなのです。

 書店にはさまざまな「節税本」がありますが、この手の本で困るのは「節税さえできれば目標達成」と考えているものが多いことです。目的をよく考えないまま節税だけに躍起になると本質が歪むのです。節税だけを考えた結果、かえって事態が悪くなってしまったり、損をしたりするケースはいろいろあります。

 儲けがあるところに課税あり

 そもそも税金を払いたくなくて意図的に売上を削ったり、経費を水増ししたりして赤字にするのは「脱税」という違法行為にあたります。

 そうでなくて本当に赤字ということは、要するに「お金がたりない」ことを意味します。この仕組みをよく理解していないと永遠に手元(会社)にお金が残らなくなります。

 ビジネスの基本は「儲けがあるところに課税あり」です。所得税や法人税がかかるということはそれだけの儲けがあるからです。儲けがあるからこそ所得税や法人税が算出されるのです。仕組みとして、所得税や法人税をきちんと払ったほうがお金は必ず残るんです。

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廣岡実

廣岡実

廣岡実(ひろおか・みのる)/税理士法人TOTAL神田事務所所長・税理士。1959年生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部を卒業後、大手商社に就職。経理・総務部門の実績を積む。税理士だった父親の病気をきっかけに退職し、父の事務所で修行。95年に税理士資格取得と同時に独立。2024年1月より税理士法人TOTALのパートナとして合流し、神田事務所所長となる。「みんなが儲けてほしい」をモットーに、顧客に寄り添ったきめ細かいアドバイスが人気を集めている。

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