だが、18分の中断後、3対2で再開された試合は、井上一樹の犠飛で同点にされ、さらに中飛落球と敬遠で1死満塁。一打出ればサヨナラだ。

 そんな絶体絶命のピンチを前に、岡田監督はマウンドに足を運び、久保田智之に言った。「打たれろ。ムチャクチャしたれ。それしかないやろ。お前の責任やない。オレが責任取る」。

 指揮官の火の出るような言葉に鼓舞された久保田は、後続2者を連続三振に打ち取り、3対3で延長戦へ。そして11回、中村の決勝ソロが飛び出し、優勝に大きく前進する劇的勝利。敵将・落合博満監督に「監督で負けた」と言わしめた“伝説の名勝負”となった。(文・久保田龍雄)

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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