「気遣いだと思うのですが、子どもを諦めたわけではなかったし、子どもがいることが幸せという前提に、何だか否定された気持ちになってしまいました」
現在は総務関連の仕事をしていて、産休や入学のお祝い金の手続きをする度に、胸が痛む。
「今は仕事と子育ての両立が推奨されていることもあり、20代の社員が気兼ねなく産休や育休を取得する印象です。私が若い時もそうだったら、仕事との折り合いを考えず、子どもを産み育てていたかもと思ってしまうのが、正直な気持ちです」
違う立場への理解を
多くの女性たちと向き合ってきたくどうさんは、子どもを持たないことで感じる苦しみの要因は、主に二つあると分析する。
一つは、子どもが欲しかったけれど出来なかったことで感じる劣等感や、親に孫の顔を見せられない罪悪感などの内的要因。もう一つは、「子どもを産み育てるべき」といった社会的な圧や、「子どもがいない=かわいそう」と、勝手にレッテルを貼られてしまう外的要因だ。自分の望んだ道に進めなかった場合、「別の道の方がよかったのでは」と考えてしまうこともあるだろう。くどうさんは言う。
「どんなライフコースでも、メリットとデメリットはあります。自分が歩むことになったコースを『これでよかった』と自身で正解にしていくことが、大切だと思います」
ライフスタイルと価値観が細分化する現代、子どもを持つ人も持たない人も誰もが生きやすい社会を目指す上で、違う立場の人を理解しようとする「エンパシー」が一層求められている。(フリーランス記者・小野ヒデコ)
※AERA 2024年5月13日号