20年前、「妊活」や「不妊治療」を公言することははばかられた。今では多様性が叫ばれているが、「子どもを持たない」選択肢は理解され難いのが現状だ(撮影/写真映像部)
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 多様性が叫ばれる昨今だが、子どもを持たない選択が理解されにくく、苦しむ女性たちがいる。その要因はどこにあるのか。AERA 2024年5月13日号より。

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 国が子育て支援政策を推し進める中、「子どもを持たない女性」たちは何を思うのだろうか。

「子どもを持つかどうかの迷いは、99.9%ありません。少子化の時代に、社会に対して申し訳ないなと思いつつ、その分税金で還元しているので許してほしいという気持ちです」

 そう話すのは、都内在住の会社員の女性(48)。これまで数回転職をし、収入を上げ、現在は男性が多い業界で管理職として働いている。順調にキャリアを重ねる中で、積極的に子どもを持とうと思ったことは一度もないという。

 子どもが嫌いなわけではない。子育てをしている人への尊敬の念もある。でも、自分が産み育てる覚悟と責任までは持てないとこぼす。平日は激務のため、ゆっくりできるのは休日だけ。今は、パートナーと暮らす日々の中で、時間とお金を惜しまずに物を買ったり、旅行に行ったりする日々に充足感を得ている。もし子どもがいたら、その時間さえままならなくなってしまう。

 親からの結婚や子どもに関するプレッシャーは特にない。だが、友人から「結婚して出産することが女の幸せ」といった価値観を押し付けられたことはあったという。女性は言う。

「あなたの幸せは、私にとっての幸せとは違う。私が味わっている幸せは、あなたには一生手に入らないよねと思って、受け流していました。『産んだら愛情が芽生えるかも』との声を聞きますが、そんな保証どこにあるのかと思ってしまう」

 そんな女性には時々、ヘッドハンティングの声がかかるという。評価されていることを感じる一方で、こうも思う。

「いま最も市場価値が高い女性は、複数の子どもがいて、バリバリ働く既婚女性ではないでしょうか。若い女性の一定数は、仕事をしながら結婚や子どもを持つことを理想としている。そのロールモデルがいる会社に入りたいと思うのでは」

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