ウエストランド 井口浩之(写真左)と河本太

 タイタンという事務所には、問題を起こしたタレントの独特の「みそぎシステム」がある。それは『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』に出演して、事務所のトップタレントである爆笑問題からお言葉を頂戴する、というものだ。河本の相方の井口浩之も、下半身露出画像がネットに流出してしまうという通称「いぐちんランド事件」を起こした際にも、この番組に出演して反省の態度を示していた。

 番組の冒頭で、爆笑問題の2人は少し話をした後、ゲストとして河本と井口を招き入れた。そして、太田光は河本に対して、諭すように優しく話をした。自分の若手時代のことも触れて、プロの芸人は決められた時間を埋めるのが仕事だから、トラブルを起こして仕事に穴を空けてはいけないんだと語った。

 酒に酔って問題行動に走った河本に対して「これから大晦日にかみさんが酒をすすめてきたときに断れるかどうかだ」と、落語の『芝浜』になぞらえた冗談も挟んでいた。

「仕事で笑わせるように」と

 最終的には、河本の反省の言葉を聞いた上で「我々は大衆芸能ですから。あとは判断するのはお客さんです。河本はこれからがんばって、仕事で笑わせるように」と締めくくった。

 上から目線で一方的な説教をするのではなく、自分が失敗して学んだ話もする。そして、常に後輩である河本に寄り添って、お前は身内だから見捨てることはない、というスタンスを崩さない。太田が上司にしたい芸能人アンケートで1位ではないのが不思議なくらいの神対応だった。

 失敗した人間を叩くのは簡単なことだ。しかし、全面的にその人に寄り添って、必要な言葉を投げかけるのは、誰にでもできることではない。

 安っぽい怒りや批判の声ばかりが飛び交うこのネット社会で本当に必要なのは、太田が持っているような「ゆるす力」ではないだろうか。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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