
『イリーガル・エイリアン』自体は一時期重版未定となっていた影響などで今のラインアップには含まれないが、こうした書籍が多数あるという。
記者も2冊購入し、取材時に柳下さんの面前で開封した。1冊は自然科学書、もう1冊は翻訳SFだった。SFは普段ほとんど手に取らない分野で、推薦文からも予想していなかった。
「お、それを選びましたか。名作ですよ。気に入ってもらえるといいな」
柳下さんがニコニコと言う。家に帰って読み始めるとページをめくる手が止まらなくなる。柳下さんの「思惑通り」だった。
出版不況。そう言われるようになって久しい。ただ、こうしたサービスや体験に接していると、改めて本の楽しさが感じられる。柳下さんの言葉をしみじみとかみしめる。
「出版とか印刷とか本屋っておもしろい仕事だし、興味を持つ若い人もたくさんいる。産業が終わるのは、若い人が業界に興味を持たなくなったときです。そういう意味で、出版はまだまだ終わってない。きれいごとじゃなくて、本って『なんかおもしろそうだな』でいいんですよ」
(編集部・川口穣)
※AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より抜粋

