4月29日は「昭和の日」。遠い記憶のかなたとなってしまったが、いま、若年層でもレトロブームで注目される時代でもある。「昭和の日スペシャル」として、その時代を象徴するような人物の記事をあらためてお届けする。今回は伝説の女優、原節子について(この内容は、2020年6月6日に配信した記事の再掲です。初出の記事は週刊朝日2020年6月26日号から。年齢、肩書、情報などは当時)
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今年は、昭和を代表する「伝説の女優」原節子の生誕100年。四半世紀に渡って、映画界をけん引してきた大女優は42歳で表舞台から姿を消した。本誌カメラマンは、引退前の1960年前に、自宅での屈託のない笑顔を捉えていた。
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庭に水をまきながらつい笑顔となるのも、寒さが和らぎ、春の兆しを感じさせる陽光のためなのだろう。「いちばん好きなのは日なたぼっこと水まき」なのだから。
本誌カメラマンが東京・狛江の自宅に原節子さんを訪ねたのは、1960年2月25日。35年のデビュー以来、四半世紀にわたって日本映画界を牽引してきた彼女は、40歳を前にしていた。
写真は「週刊朝日別冊」60年陽春特別号に掲載された。映画「路傍の石」撮影中の様子を報じた同誌で、原さんは、本を読むこと、泣いた後の解放感、日なたでぼんやりしてることが好きだと明かし、次回出演作「娘・妻・母」での台詞に絡めて、女優引退後にはおでんやでも、と示唆した。
本誌に笑顔を見せた2年後。「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」を最後に、原さんは映画界から退いた。(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2020年6月26日号