「激務なのに報酬は安く、将来が見えないので若手がよりつかない」と学校写真を撮影するカメラマンについて語る松本さん(仮名)

30年前から報酬変わらず

 そもそも、高価な機材が欠かせず、機材を運搬する車も必要なのに、報酬は決して高くない。大手卒業アルバム業者が価格破壊を引き起こし、潰れた写真館はかなりある。残った写真館も値下げに追従せざるを得ない状況になった。代写カメラマンの報酬は、首都圏の場合、1校につき2万円ほどで、30年ほど前からほとんど変わらないという。

 首都圏に拠点を持つ60代の広告カメラマンも「代写の仕事を長年引き受けてきたが、本音を言うと、もうやりたくない」と漏らす。友人が卒業アルバムの制作をしていて、卒業式や入学式などが重なる繁忙期に代写を頼まれると、断れない。

「ギャラがあまりにも安すぎる。これでは、他のカメラマンを紹介することもできない」

修学旅行と運動会で30連勤

 さらに、学校写真の現場は重労働だ。

 例えば、運動会では児童生徒全員を確実に写すことが求められる。学校にもよるが、撮影枚数は1日約5千枚。重い機材をかかえて校庭を走りまわり汗だくになった後は、学年別に写真をセレクトして納品しなければならない。修学旅行の同行撮影では朝7時に東京駅に集合。新幹線での移動から撮影は始まり、名所旧跡をまわる生徒たちを一日中撮影する。夜は11時ごろまで学校や旅行会社と打ち合わせる。翌朝は6時起床、また撮影が始まる――。

「卒業式などの集合写真の撮影が1日で終わればいいですが、ほとんどの場合、欠席者があって、報酬なしで追加撮影がある。それが1回で済まないと、ストレスがたまります。学校はこちらのギャラについては配慮してくれない」(広告カメラマン)

「平日は4泊5日の修学旅行、週末は運動会で30連勤くらいしたことがあります。その間に納品もあるので、とてつもなく忙しい」(前出の松本さん)

 写真の仕事に憧れて、今でも学校写真を目指す若者もいるが、実際に働いてみると、あまりにもきついので5年以内にやめてしまうことが多い。ある程度、撮影技術が身についてくれば、ECの商品を撮影したほうが楽に稼げたりするので、学校の撮影には戻ってこない。

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