電気と都市ガスへの補助金が5月の使用分で終わる。写真はイメージです🄫gettyimages

 政府がこうした方針を示したのは、先行きに光が差し込みつつあるタイミングだ。今年の春闘は大幅な賃上げが実現した。労働組合の中央組織・連合が4月18日に公表した第4回集計結果によれば、定期昇給を含む正社員の賃上げ率は平均5.20%で、1991年以来33年ぶりの高水準だ(月あたりの賃上げ額は加重平均で1万5787円)。

好循環の流れに…

 賃上げの額は会社やその人の年齢などによって異なるものの、期待が持てる内容だけに、新家さんは前述のレポートで「電気・ガス代の上昇が賃上げ発の好循環の流れに水を差すことが懸念される」などと指摘している。

 ここで不思議なのは、電気・ガス代への補助はやめるのに、ガソリンへの補助金は続ける点だ。

 ガソリンへの補助金は石油元売り会社に補助金を出してガソリンスタンドの仕入れ価格を下げる仕組みだ。22年1月にスタートし、レギュラーガソリンの全国平均価格を「1リットルあたり175円程度」に抑えることを目標としている。

電気やガス代が増えれば家計の負担は重くなる

 補助をやめるとガソリン代は同190~200円に値上がりするとされるから、車を利用する家計にとってはひと安心だ。しかし車を使わなかったり、使う頻度が少なかったりする家庭にとって恩恵は少なく、理不尽に感じる。

 エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎学長は、政府の矛盾にも映る姿勢について「選挙対策を意識したのかもしれません」と話す。

「電力の利用者は、どちらかと言えば『広く、浅く』分布しているのに対し、ガソリンの利用者はそれに比べて偏っています。業界団体のあり方も違う。ガソリン経営者が集まる団体は全国にあって結束力もあり、集票が期待できると考えたのではないでしょうか。そもそも電気・ガスもガソリンも、今回の補助金の制度に合理性はありません。ガソリンの補助金を続けるのは、中東情勢が緊迫化し、原油価格上昇の恐れがあることも理由でしょうが、今は与党に逆風が吹いていますから、引っ込みがつかなくなったことも大きいと思います」

次のページ
自分にとって得かどうか