西海岸ならドジャースに対しジャイアンツやパドレスのファンから『Beat LA(LA倒せ)』のコールが起こる。ヤンキースタジアムでは外野席から内野席に向かって『Box Seats Suck(ボックス席に座っている奴は最悪だ)』の声がかかる。その他の地域や他競技でも同様の掛け合いが当たり前に繰り返されている。

「子供に見せられない光景と言う人がいる。しかし今の子供はもっと現実的で世間を知っている。ゆとり世代の問題同様、緩くすればよいということではない。そして『日本人はエンタメの楽しみ方がわからない』と自ら認めているようにも感じてしまう」(元在京球団応援団)

 同様の動きが野球だけでなくサッカーや他競技にも広がっている。国際試合が多い競技については「選手の(メンタル部分での)成長を阻害する危険性がある」という懸念も生まれつつある。

「海外でのアウエー試合では誹謗中傷のようなヤジは当たり前。国内の守られた環境しか知らない選手がそういう中で普段のパフォーマンスを発揮するのは難しい。サッカー日本代表や侍ジャパンで海外組が逞しく感じるのも理解できる」(在米スポーツライター)

 競走社会のスポーツ界では時に“厳しい環境”が必要なのは間違いない。サッカーJ1ヴェルディのブラジル人選手マテウスも日本のサポーターの“緩さ”が気になったよう。数的優位に立ちながら終盤に追いつかれた4月13日の試合(FC東京との東京ダービー)後に「ブラジルではダービーで、こういう追いつかれ方をしたら警察沙汰になっている。それはノーマルなこと。もっと選手に厳しくしてもいい」と試合後にファンへ向けて語った。

「サッカーの一部サポーターのように、結果に応じて誹謗中傷したりモノを投げるのは問題外。プロ野球も昭和の時代ならそういう心配もあっただろうが、今はそこまでのことは起こらないはず。監視カメラを含めセキュリティも発達している」(元在京球団応援団)

 もちろん誰もが楽しめる環境があることがスポーツ観戦の大前提であるのは間違いない。しかし、ヤジやコールの一つ一つに規制を作っていくのではなく、多少のグレーゾーンがあった方がスタンドにも活気が生まれるはず。もちろん他人が気を害すようなものは許されないが、度を越さなければ“寛容”の気持ちで受け入れることもスポーツがさらに盛り上がるためには重要なことかもしれない。

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