初めて聞けた、飯塚氏の「本心」
――飯塚受刑者の一連の回答を、どう受け止めていますか?
正直、回答なしという結果も想定はしていたんですよ。裁判で繰り広げられた彼の無罪主張には、法治国家における当然の権利とはいえ、苦しめられたこともあったし、あまり期待してまたがっかりするのは嫌だなと。
でも回答を読んで、思いのほか真摯に答えてくれたという印象を受けました。もちろん文章は短いですが、92歳という彼の年齢を考えると、しょうがないかなと思います。報告書には、飯塚氏が、私の言葉について「妥当だと思う」、刑務所での面会や出所後の対談は「受け入れる」と言っていた旨が書いてありました。裁判での利害関係がなくなった今、初めて彼の本心が聞けて、同じ視点に立てたんじゃないかなと思います。
――今後の飯塚受刑者との対話で、どのようなことを聞きたいですか?
再発防止に向けた僕の思いは分かってもらえたと思うので、今回の『はい』『やめていました』といった回答の先に、話を深めたいです。失敗した人の後悔にこそ、次の失敗の芽を摘むヒントがあるはず。社会制度、医療、交通環境、どんな視点でもいいので、『こうだったら事故を起こさなかった』という反省や悔しさを聞きたいです。世間の人は『言い訳するな』とたたくかもしれないけど、彼の言葉を封殺してしまうと未来の糧にできなくなるので、それはどうかやめてほしい。
飯塚さんの年齢を考えると、一日一日を無駄にせずに、早く面会に行かなければと思います。ただ、真菜と莉子の命日の19日までは精神的にいっぱいいっぱいなので、今は考えるのをやめています。