家族3人で暮らしたアパートで取材に応じる、松永拓也さん(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

運転を止めたら人権侵害?

〈質問4:医師から、明確に運転を止められていたとしたら、あなたは運転をやめていましたか。 回答:「やめていました。」〉

〈質問5:事故当時、自分自身はパーキンソン病又はパーキンソン症候群の可能性があったと思っていますか。 回答:「はい。」〉

〈質問6:パーキンソン症候群が運転をしてはいけないという分類に属されているとしたら、運転をやめていましたか。 回答:「やめていました。」〉

 飯塚氏は事故当時パーキンソン症候群の疑いがあると診断されていて、右足を動かしづらい症状がありました。担当医師は、体調が悪い時には運転を控えるよう伝えていたけれど、高齢者の方にも移動の自由がある以上、無理やり止めることはできません。でも、運転は人の命を奪いかねないものである以上、医学的な見地からある程度制限をかける権限や、人権侵害で訴えられないよう医師を守る制度は必要ではないかと思います。

〈質問7:家族からどんな声掛けがあれば、運転をやめようと思いましたか。 回答:「やめるように強く言われていたらやめていた。」〉

〈質問8:高齢で刑務所に入る苦しみはどのようなものですか。 回答:「(いろいろな規則や指示に)従うことが苦しい。」〉

 特に高齢者の場合、自分の運転が危ないかどうか客観的に判断するのは難しいので、どうしてもご家族の介入が重要になります。どういう声がけがあれば運転をやめていたのか、当事者の声を聞きたくて、質問をしました。

 8は、刑務所に入ることになった彼の苦しみを、多くの高齢者の方に知ってもらい、同じ思いをするのは嫌だなと思ってもらえたらという意図がありました。彼の言葉には、やはり重みがあると思うので。

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「言い訳するな」とたたかないで