
孫は、人型ロボット「Pepper」の開発を林に委ねる。とはいえ、林がそれまでつくっていたのは車。そもそもソフトバンクは、本格的なものづくりの経験がなかった。プロジェクトは多くの部署の寄せ集め部隊で、初めは協力もうまく得られなかった。業を煮やした孫が役員が揃う会議で発破をかけた。
「林、お前の情熱が足りないから、プロジェクトが動かないんだ!」
結果的に、孫の叱責が「プロジェクトを率いているのは林」という意識づけとなり、協力者の姿勢が変わった。14年のマスコミ発表にこぎ着ける。出荷開始後、「孫さんのように自らリスクを取り、大きなことを成し遂げる挑戦をしてみたい」という想いから、林は15年9月に同社を退社した。
「Pepperの開発で、ないものをゼロからつくる大変さはひと通りくぐり抜けた。誰もゴールがどこにあるかわからないまま走っていたし、常に高めのオーダーを投げてくる孫正義というプレッシャーがある。必死に攻めるしかなかった」
抱っこを求めるロボット 演劇の経験が役に立つ
ロボットづくりは大変だから、もうやめよう。そう思っていたのに、会う人会う人が「ロボットをやってくれ」と期待してくる。退社した年の暮れ、林の脳裏にふっとアイデアが降ってきた。
人を幸せにする生き物みたいなロボットをつくりたい──。
(文中敬称略)(文・古川雅子)
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